最後の短篇企鵝の剥製

読んだ短篇についての雑な覚書を書くペンギンは絶滅しました。本博物館では、在りし日のタンペンペンギンの姿を剥製によって留めています。

Anthony Doerr, "The Deep"(2011)

1914年にデトロイトで生まれたトムには心臓の持病があって、十八歳までは生きられないだろうと医者から宣告されていた。過保護な母親はトムの体を気遣ってほとんど家に閉じ込めるような生活をさせていたが、成長過程でルビーというダイバーを夢見る少女との出逢いがあり……という短編。

海とか青とか塩(1900年前後のデトロイトは岩塩の街でもあり、トムの母親の経営する下宿も塩関係の労働者向け)とか両生類とかのモチーフを引いたカメラから器用に操作しつつ感傷マゾいエモーショナルなボーイ・ミーツ・ガールに持っていって感傷マゾい人生のほろ苦さをブレンドするのはアンソニー・ドーアだなあってノリ。


ところで最近、「○○(作家名)だなあ」で感想を済ませることが多く、感情の劣化を感じる。