最後の短篇企鵝の剥製

読んだ短篇についての雑な覚書を書くペンギンは絶滅しました。本博物館では、在りし日のタンペンペンギンの姿を剥製によって留めています。

2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

Richard Powers, “Dark was the Night”(2011)

宇宙ペンギン 概要 ・8000ワードほど。 ・初出は Playboy ・2010年、かつてジェット推進研究所でボイジャーに搭載するカメラの開発に関わっていた元エンジニアの老人ブルーノ・クラニックが認知症向けの記憶増強剤の治験に参加し、その薬の影響(?)で忘れ…

George Saunders, "I Can Speak!™"(1999)

ベイビーペンギン、しゃべる! 前書き ・『Disco Elysium』にあらゆる余暇を潰されているので未邦訳短篇を読むなんてヒマの極みみたいなことやってんらんないのよ。 ・別に未邦訳短篇ではなくてもいいのだけれど、先程言ったとおり『Disco Elysium』にあらゆ…

Kevin Wilson, "Scroll Through The Weapons"(2015)

カラヴァッジョっぽくしてくれっていったのにあんまりカラヴァッジョっぽくならなかった戦うペンギン 概要 ・第二短編集『BABY, YOU’RE GONNA BE MINE』から。初出は Ploughshares で、発表当時のタイトルは “An Arc Welder, a Molotov Cocktail, a Bowie Kn…

うそんこ文書アンソロジーに掲載された40作品のタイトルとその分類+α

(これは深夜に書類仕事に追われているかわいそうなペンギン)『FAKES: An Anthology of Pseudo-Interviews, Faux-Lectures, Quasi-Letters, "Found" Texts, and Other Fraudulent Artifacts』(2012)というアンソロジーをだいたい読んだ。タイトルどおり、…

Rick Moody, "Primary Sources"(1995)

画像はイメージです(This Image is an image.) 概要と背景とあらすじ ・初出は The New Yorker ・著者のリック・ムーディは1961年生のアメリカの作家。日本ではカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞したアン・リー監督の映画『アイス・ストーム』の原作者として…

Kate Folk, "Out There"(2022)

背景 ・7400ワードほど。 ・初出は The New Yorker www.newyorker.com ・ケイト・フォークは2011年にサンフランシスコ大学でクリエイティブ・ライティングの修士号を取得したのち、The New Yorker、Granta、McSweeney's といった一流誌に作品を発表し 、2022…

Fernand A. Flores, "Ropa Usada"(2022)

背景 ・約2300ワード ・概要:膨大な数の古着が集積してエコシステムというか土地そのものになってしまった場所(倉庫?)で、キャシーという大学院生がネットで売る古着を探してちょっとした冒険を繰り広げる。 ・初出は The Common。第二短編集にして最新…

Kevin Wilson, “The Neck’s What Keeps Heart and Head Together”(2003)

背景情報 ・5450ワードほど。 ・ケヴィン・ウィルソンがまだ単行本も出していなかった24,5歳くらいのころの作品。 ・初出は Blackbird blackbird.vcu.edu あらすじ ・修道院で下働きしている日本人の母親と暮らすベッキー、ジェニー、キャリーの三姉妹。彼女…

Weike Wang, "OMAKASE"(2018)

概要 ・ボストンからニューヨークへ移住してきた36歳の銀行勤めの中国系アメリカ人女性が、陶芸家(白人男性)の恋人といっしょに新しく見つけた寿司屋に行く。そこで寿司に舌鼓を打つあいだ、彼女は色々なところに自らの体験や家族の思い出とからんで差別(…

Ian McEwan, "A Duet" from "Lessons: A Novel"(2022)

・8780ワードほど。短編じゃねえ。それもそのはずで9月に出版される『Lessons』という長編の一パート(冒頭部)らしい。非常にまとまりがよいので短篇としても十二分に読める。だから中篇だっていってるじゃん。 ・初出は The New Yorker。 www.newyorker.co…

Richard Powers, “To the Measures Fall”(2010)

www.newyorker.com・4900ワードほどの二人称小説。 あらすじ ・1963年、アメリカから英国に留学中の大学三年生である「きみ You」(女性)は、春学期の終わりにコッツウォルズという島を観光していた。そして、たまたま立ち寄ったジャンク屋でエルトン・ウェ…

Kevin Wilson, "Excerpt from The Big Book of Forgotten Lunatics, Volume 1"(2009)

・The Rapture に掲載。 www.therupturemag.com ・1000ワード弱。 ・同じタイトルの短編が2012年にも書かれているが内容は異なる。「忘れられた狂人大全」という事典からの抜粋という体裁なので、同じタイトルで違う話がいくらでも書けるのだろう。 ・今回は…

Kevin Wilson, “Blue-Suited Henchman, Kicked Into Shark Tank”(SmokeLong Quarterly, 2009)

・1000ワード弱 ・80年代に香港映画界で活躍した白人やられ役俳優(架空)リック・ショーの物語。 あらすじ ・「彼はサニー千葉から三回に渡って顔面に回し蹴りを喰らった。ゴードン・ラウ(劉家輝)は『六峰遊戯 Six Pints of Death』で彼の腕を棍棒で粉砕…

Charles Yu, "Troubleshooting"(2012)

・短編集"SORRY PLEASE THANK YOU"より。 ・前回の "Problems for Self Study"でチャールズ・ユウの短篇に興味が出てきたので、既訳の「システムズ」*1、「OPEN」*2、「NPC」*3を読み直したり(「システムズ」については初読)してたんだけどやっぱあんまり…

Charles Yu, "Problems for Self Study"(2002)

・約2150ワードほど。 ・『Fakes: An Anthology of Pseudo-Interviews, Faux-Lectures, Quasi-Letters, "Found" Texts, and Other Fraudulent Artifacts』で読んだけれど、初出は『Harvard Review』の2002年秋号。ウェブに再録されていて無料で読める。チャ…

Joseph Conrad, "The Duel"(1908)

あらすじ ・約三万ワード。もはや短編じゃねえ。 ・正確なあらすじや作品背景については、わたしのものについてはたぶんちょくちょく間違っているので、詳しくは英文学研究者の秋葉敏夫の論文「名誉と決闘と人生と――コンラッドの『決闘』について」を読んだ…

Kevin Wilson, “Another Little Piece” (Prime Number Magazine, 2010)

www.press53.com あらすじ ・約1900ワード ・人生に絶望している語り手(オスカー)のもとへ母親から自助グループのチラシが送られてきて、しぶしぶながら〈ミッシング・アワセルブス(Missing Ourselves)〉という団体に参加する。 ・〈ミッシング・アワセ…

Kevin Wilson, “Excerpt from the Big Book of Forgotten Lunatics, Volume 1” (Hobart, 2012)

www.hobartpulp.com あらすじ ・約1200ワード。 ・タイトルを訳すと「『忘れられた狂人大全 第一集』より抜粋」。マイナーな狂人を集めて紹介する本からひっぱってきた文章です、という体裁。 ・この項では「失踪する野球選手」ことモーゼス・ケイジ(1960-…